四天王寺大学人文社会学部社会学科の藏口 佳奈講師と大阪大学大学院人間科学研究科の入戸野 宏教授の研究グループは、赤ちゃん顔の「かわいさ」は、顔画像を逆さに提示したときでも同じように判断できることを明らかにしました。また本研究成果は、学術誌「Perception」のオンライン早期公開版に9月4日(月)に公開されました。
研究成果のポイント
●顔の印象は、画像を上下逆さに提示すると判断しにくくなると言われてきた。●しかし、赤ちゃんの顔の「かわいさ」は、逆さにしても同じように評価できることが明らかとなった。
●「かわいさ」は、丸みを帯びた顔や大きな目といった個々のパーツの特徴によって知覚される。
●80年前に提案されたベビースキーマ説を支持するデータが得られた。
研究の内容
本研究では、20~71歳の日本人男女299名を対象にオンライン実験を行いました。まず、コンピュータで合成した6ヶ月児の赤ちゃん顔画像12枚から、「かわいさ」の平均評定値が高かった顔6枚と低かった顔6枚を1枚ずつ見せて、それぞれの「かわいさ」を7段階で評定してもらいました(1:まったくかわいくないー7:非常にかわいい)。次に、「かわいさ」の程度を増減させた別の合成顔のペアを9対見せ、どちらの顔がよりかわいいと感じるかを選択してもらいました。このとき、顔画像の上下が正しく提示されている顔(正立顔)を判断する群と、上下逆さに提示されている顔(倒立顔)を判断する群を設けました。また、比較のために赤ちゃん顔の「美しさ」を正立顔と倒立顔について判断する群も設定しました。実験参加者は4つの群のどれか1つに参加しました。
実験の結果、赤ちゃん顔の「かわいさ」の評定値は、顔を逆さにしても低下しないことが分かりました。また、「かわいさ」の平均評定値が高かった顔と低かった顔の差も同様に変化しませんでした。さらに、2つの顔からよりかわいい顔を選択する課題の成績も、顔画像の向きにかかわらず、偶然よりも高くなりました(ただし、倒立顔ではわずかに成績が下がりました)。同様の結果は、赤ちゃん顔の「美しさ」を評価・判断するときにも得られました。
これらの結果は、赤ちゃん顔の「かわいさ」は、上下逆さになっても同じように知覚できることを示しています。「かわいさ」のわずかな違いを判断するときには目・鼻・口などの相対的な位置関係も利用されますが、主には、個々のパーツの特徴(丸みを帯びた顔の輪郭や大きな目など)に基づいて「かわいさ」は知覚されるのです。この知見はローレンツのベビースキーマ説と一致しています。
◎特記事項
本研究成果は、学術誌「Perception」のオンライン早期公開版に9月4日(月)に掲載されました。タイトル: “Face inversion effect on perceived cuteness of infant faces”
著者名 : Kana Kuraguchi and Hiroshi Nittono
DOI : https://doi.org/10.1177/03010066231198417
本研究は、JSPS科研費21K13679、21H04897の助成を受けたものです。
受理された原稿は、 https://osf.io/t6sd2 から閲覧・ダウンロードできます。