
海上・港湾・航空技術研究所電子航法研究所と電気通信大学の研究グループが、全球衛星航法システム(GNSS)受信機の超稠密ネットワークデータを用いて、スポラディックE層の詳細構造をこれまで以上に詳細に明らかにした。
概要
項目名:新技術の開発によるスポラディックE層の詳細構造の観測
研究グループ:海上・港湾・航空技術研究所電子航法研究所、電気通信大学
主な成果:スポラディックE層の詳細構造とその生成から消滅に至る過程を2倍の解像度で観測
スポラディックE層とは
スポラディックE層は、高度100km付近の電離圏に発生する非常に電子密度の高い層で、突発的に現れることからこの名前があります。この層は、通常は電波を反射しない特定の周波数帯の電波を反射し、通常は届かない範囲まで電波を伝播させることが知られています。
本研究の成果
本研究では、全球衛星航法システムの超稠密ネットワークデータを用いて、スポラディックE層の詳細構造をこれまでの2倍の解像度で明らかにしました。これにより、未知だったこの層の複雑な構造が明らかになり、Es層の発生から消滅に至る一連の過程を初めて詳細かつ連続的に観測することができました。この発見は、電波の長距離異常伝播を引き起こすなど電波利用の障害となるスポラディックE層の発生予測に必要な数値モデルの改良に貢献し、地球大気の上下結合過程を理解する一端となります。
今後の展望
今後はさらに観測データを収集し、専門家とともに電波伝播環境予報の実現に向けてEs層の発生予測モデルの改良を進めていく予定です。詳細な研究結果は2025年11月27日に神戸大学で行われる「地球電磁気・地球惑星圏学会 2025年秋季年会」で発表される予定です。
使用データについて
本研究で使用したデータは、ソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データと、国土地理院が運用するGNSS Earth Observation NETwork(GEONET)データです。これらのデータはそれぞれ、ソフトバンク株式会社およびALES株式会社、及び国土地理院より提供されたものです。