睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクをAIで高精度予測、JMDC・オムロン・筑波大学が共同研究

株式会社JMDC、オムロン株式会社、および国立大学法人筑波大学の共同研究グループは、国内最大規模の医療データとPHRサービス「Pep Up」のライフログデータを組み合わせ、治療が必要なレベルの睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクを高精度に予測するAIモデルを開発しました。この研究成果は国際学術誌「Sleep and Breathing」に掲載されています。

概要

本研究は、JMDCが保有する医療データと、PHRサービス「Pep Up」に記録された日々のライフログデータを統合し、AIを活用して治療が必要なレベルのSASリスクを予測するモデルを開発したものです。

概要:

SASリスク予測AIモデル開発

対象:約186万人のPep Upユーザーのデータ(2022年1月~2024年7月)

手法:機械学習(LightGBM)によるSAS治療(CPAP治療)者の特徴学習

予測因子:男性、年齢、BMI、腹囲、採血結果、睡眠時間など

開発主体:株式会社JMDC、オムロン株式会社、国立大学法人筑波大学

論文掲載誌:Sleep and Breathing

公開日:2026年6月9日

「隠れSAS」の早期発見と適切な医療への誘導を目指して

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする病気で、高血圧や脳卒中などのリスクを高めます。しかし、自覚症状が乏しい「隠れSAS」が多く存在し、確定診断には専門的な検査が必要です。従来のSASリスク把握は、受診や専用デバイスの利用といった、本人が主体的に選択し、コストや手間をかけて行う方法に限られていました。

この課題に対し、共同研究グループは、医療機関を受診しない一般の方々も含め、ほとんど手間や追加コストをかけずにSASリスクの高い人を見つけ出し、適切な検査・治療につなげることを目指しました。約186万人規模のデータとAIを活用し、レセプトデータ、健康診断データ、そして家庭血圧計やウェアラブルデバイス等から得られる「日常の健康データ(PHR)」を統合して予測モデルを構築しました。

AIモデルの主な成果と今後の展望

開発されたAIモデルは、治療が必要なレベルのSASの有無を高い精度で予測できることが確認されました。予測性能を示すAUROCは0.898でした。予測スコアが上位1%に入った人のうち約3割、上位10%に入った人のうち約1割が、実際にCPAP治療を受けているSAS患者に該当し、無作為に検査するよりもはるかに効率的にハイリスク者を見つけられることが示されました。主要な予測因子としては、男性であること、年齢、BMI、腹囲などが挙げられ、過去の研究結果とも一致しています。また、「Pep Up」を通じて血圧や睡眠時間などを日常的に記録しているユーザーほど、PHRが予測に貢献する度合いが高いことも明らかになりました。

今後は、このAIモデルを活用し、日常生活の中で「隠れSAS」の早期発見や、リスクが高いと判定された方への精密検査の推奨、早期治療への誘導を目指します。これにより、健康寿命の延伸や、SASによる日中の眠気や集中力低下に起因する労働生産性の低下抑制にも寄与することが期待されます。

また、オムロンは、本研究で示された日々の健康記録の有用性を活かし、家庭血圧計やウェアラブルデバイス等のデータを用いた健康管理と予防の新たな時代の実現を目指します。JMDCは、SASを皮切りに、脳心血管イベントやその他の生活習慣病、メンタル疾患などへのAIモデル展開を進め、予防医療ソリューションの事業共創を視野に予測サービスを社会に還元していく方針です。

研究者コメント

筑波大学 医学医療系 教授 岩上 将夫
「SASは、自覚しにくく見逃されやすい病気であり、もっと早く気づけていればと感じる場面が少なくありませんでした。今回のモデルが、既存の健診データや日々の記録からリスクの高い方を見つけ出し、適切な受診・治療につなげる一助となり、一人でも多くの患者さんを救うことにつながればと願っています。」

筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 機構長・教授 柳沢 正史
「睡眠時無呼吸症候群は、本人が気づかないうちに全身をむしばむ代表的な『見逃されやすい病気』です。客観的なデータからリスクを拾い上げる仕組みには大きな意義があり、一人でも多くの方がご自身の睡眠と向き合うきっかけになることを期待しています。」

JMDC デジタル&データ新規事業本部 データイノベーション部 部長 上田 剛
「大規模なリアルワールドデータとAIによって、見逃されやすい『隠れSAS』のリスクを追加の検査なく高い精度で捉えられることを示せました。この成果を論文で終わらせず、パートナーと事業共創を進め、誰もが負担なく自身の健康に気づける仕組みを社会へ届けていきたいと考えています。」

オムロン データソリューション事業本部 プロアクティブヘルス事業部 マネージャー 林 達也
「今回の成果によって実現したSASリスクの高精度予測モデルと、オムロンのデバイスから得られるライフログデータを組み合わせることで、SASの早期発見・早期介入を実現し、予防医療サービスの社会実装を目指してまいります。」

論文概要

タイトル:Development and internal validation of a prediction model for sleep apnea syndrome treated with continuous positive airway pressure based on claims and health checkup data linked to personal health records

著者:Tatsuya Muraki, Tsuyoshi Ueda, Chihiro Hasegawa, Hiroshi Usui, Hiroshi Koshimizu, Kenichi Ariyada, Kunio Kusajima, Yasuhiro Tomita, Masashi Yanagisawa, Masao Iwagami (株式会社JMDC、オムロン ヘルスケア株式会社、筑波大学 ほか)

掲載誌:Sleep and Breathing

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42262410/

公開日:2026年6月9日

DOI:10.1007/s11325-026-03725-9

用語解説

SAS(睡眠時無呼吸症候群、「サス」):睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりを繰り返す病気。

CPAP(持続陽圧呼吸療法、「シーパップ」):鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を確保するSASの代表的な治療法。本研究では、この治療が必要な重症度のSAS患者を予測の対象とした。

PHR(パーソナルヘルスレコード):健康診断の結果や服薬の履歴、家庭で測った血圧・体重・歩数・睡眠などの日々の健康データを、本人がスマートフォンアプリなどでまとめて記録・管理できる仕組み。

ライフログ:家庭血圧計・体組成計・ウェアラブルデバイスなどによって日々記録される、血圧・体重・歩数・睡眠時間といった生活・健康の記録データ。本研究では、PHRサービス「Pep Up」に蓄積されたこれらのデータを予測に活用した。

AUROC(ROC曲線下面積):予測モデルの性能を示す指標。0~1の値をとり、1に近いほど予測性能が高い。

関連リンク

https://www.jmdc.co.jp/

https://stories.jmdc.co.jp/pepup

https://www.omron.com/jp/ja/

https://www.tsukuba.ac.jp/

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