
タガメが、天敵であるアリからの捕食リスクや乾燥リスクの低い場所を厳選して産卵していることが、倉敷芸術科学大学と長崎大学の研究グループにより明らかになりました。
概要
倉敷芸術科学大学生命科学部環境生命科学科の渡辺黎也助教、長崎大学の大庭伸也准教授、同学部学生の大畑蓮(2025年度卒業)の研究グループは、絶滅危惧種タガメの産卵場所選好性に関する研究成果を発表しました。本研究は、タガメの繁殖生態を解明し、具体的な保全策を講じるための重要な知見を提供するものです。
産卵場所の選好性: 岸から離れた位置の棒、日陰になる場所、棒の暗い面(日陰側)
孵化率: 日陰向きの方が日向向きよりも有意に高い
発表元: 倉敷芸術科学大学、長崎大学
掲載誌: Ecological Entomology(2026年6月15日公開)
タガメの産卵場所選好性の解明
タガメは、メスが植物や棒に卵を産み、オスが給水や天敵からの保護を行います。オスの保護がない卵は孵化に至らないため、メスは孵化成功率の高い場所を選んで産卵する可能性が考えられてきました。しかし、タガメ亜科におけるその実態は未解明でした。環境省の絶滅危惧Ⅱ類および特定第二種国内希少野生動植物種に指定されているタガメの繁殖生態を解明することは、保全策を講じる上で極めて重要です。そこで、本研究では生息地での野外調査と室内実験、および半野外条件下での「日向」と「日陰」での孵化率の比較検証を実施しました。
産卵場所選好性と孵化率の関係
一連の調査・実験の結果、タガメのメスは、池の上空を覆う樹木の下を好み、陸伝いにアリが接近しにくい「岸から離れた位置の棒」に多く産卵することが明らかになりました。また、日陰になる場所や、棒の明るい面よりも「暗い面(日陰側)」を好んで産卵する傾向が見られました。さらに、卵塊を人工的に「日陰向き」と「日向向き」に配置した実験では、日向向きよりも日陰向きの方が、孵化率が有意に高いという結果が得られました。これらの結果から、メスはアリが来ないような岸から少し離れた場所や日陰になりやすい場所に産卵することで、オスの「日傘行動」と相まって卵塊の乾燥リスクを低減させ、結果として孵化率を効率的に高めていると考えられます。本研究の結果は、絶滅危惧種タガメの適切な産卵環境(棒の配置)を明らかにすることで、孵化率の向上と個体数の回復・増加に大きく貢献する重要な成果と言えます。
まとめ
タガメは、アリからの捕食リスクや乾燥リスクを避けるため、岸から離れた日陰の場所を産卵場所として選ぶことが明らかになりました。この発見は、絶滅危惧種タガメの保全に繋がる重要な知見です。