騒がしい環境での聞き取り能力の発達的標準値を確立

同志社大学と北陸先端科学技術大学院大学の研究グループが、年長児から小学6年生を対象とした大規模調査により、騒がしい環境で音声を聞き分ける「選択的聴取能力」の日本語環境における発達的標準値を初めて確立しました。

選択的聴取能力の標準化と意義

教室や体育館のように騒がしい場所で、教師や友人の声を聞き取る力は学校生活において不可欠です。しかし、この能力は純音による基礎的な聴覚機能とは異なり、16歳になっても成人レベルに達しない場合があるなど、発達過程には大きな個人差が存在します。近年、聞こえているのに聞き取りが困難な「聞き取り困難症(LiD)」や「聴覚情報処理障害(APD)」への関心が高まる中、現場で配慮を要する子どもを定量的に特定するための標準データが求められていました。

研究グループは、教育・保育現場での実用を見据え、714名のデータを基に選択的聴取能力のアセスメントツールを標準化しました。本標準値を用いることで、同学年の平均より著しく成績が低い子どもを早期に特定し、座席配置の工夫や音響環境の改善といった適切な教育的配慮へつなげることが可能になります。なお、本研究で用いた2種類の課題は、合わせて15分程度で実施可能です。

大規模調査で明らかになった発達プロセス

研究では、ターゲット音声と妨害音を同時に提示する「聴覚的図と地課題」と、左右の耳に異なる単語を提示する「競合語課題(両耳分離聴課題)」の2種類を用いて分析が行われました。主な結果は以下の通りです。

・学年が上がるにつれて両課題の正答率は向上し、個人差は収束していくことが確認されました。
・競合語課題において、年長から小学3年生の低学年では右耳の正答率が高い「右耳優位性」が見られましたが、小学4年生以降はその差が縮小しました。
・2つの課題間には中程度の正の相関があり、それぞれが異なる認知プロセスを測定していることが示唆されました。
・学年や提示耳ごとの平均正答率および標準偏差を算出し、パーセンタイル基準値として活用可能なデータを確立しました。

本研究の成果は、日本音響学会誌82巻7号(2026年7月1日刊行)に掲載されています。

まとめ

子どもが騒がしい環境で音声を聞き取る力について、日本語環境での発達的標準値が初めて確立されました。この標準データは、教育・保育現場における聴き取り困難な児童の早期発見と適切な支援の指針として活用が期待されます。

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