大学発ベンチャー表彰2022において「迷走神経刺激カテーテル開発」が、日本ベンチャー学会会長賞を受賞

国立研究開発法人国立循環器病研究センターと株式会社ニューロシューティカルズが共同で推進している迷走神経刺激カテーテル開発が、大学発ベンチャー表彰2022において、日本ベンチャー学会会長賞を受賞しました。九州大学発ベンチャー企業であるニューロシューティカルズ社が推進する迷走神経刺激カテーテル開発とビジネス戦略が評価され、国循の循環動態制御部、朔 啓太室長は支援機関研究者として表彰されました。

大学発ベンチャー表彰

「大学発ベンチャー表彰」は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が2014年度に開始した制度です。
大学や高等専門学校、国立研究開発法人などの研究開発成果を活用して起業したベンチャーのうち、今後の活躍が期待される優れた大学発ベンチャー企業や、特にその成長に寄与した大学や企業などが表彰されます。
ニューロシューティカルズ社は、九州大学発ベンチャー企業であり、2020年以降は国循とともに、迷走神経刺激カテーテルの開発や基礎検証を進めています。

今回の受賞においては、デバイス開発だけでなく、会社の収益面において受託等をバランス良く取り入れることで成長に必要な優れた収益・成長モデルを構築している点が評価されました。

■受賞に関する情報
JSTホームページ
https://www.jst.go.jp/tt/journal/journal_contents/2022/10/2210-07_article.html
NEDOホームページ
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101566.html

迷走神経刺激カテーテル

心不全は一度発症すると一部の進行ガンと同程度に予後不良な疾患です。
日本を含む先進諸国では、心不全患者が急増する「心不全パンデミック」の到来が大きな社会・健康問題となっており、心不全急性増悪期における適切な対応が遠隔期の再入院や生命予後の改善をもたらすことが知られています。
心拍数は心臓の仕事量を決める最重要因子です。
心筋梗塞や急性心不全、不整脈などさまざまな急性循環器疾患で脈が速い頻脈と呼ばれる状況は、心臓の仕事量を増やし病態をさらに悪化させることが知られています。
心拍数を自在にコントロールできれば多くの治療につながりますが、薬剤では至適な脈に落ち着かせることができない場合が存在します。
迷走神経は脳から直接心房につながっており、心拍数を強力に調節することが知られています。つまり、迷走神経刺激を行うと脈の調節が可能になります。
また、迷走神経刺激は心拍数低下以外にもさまざまな心血管保護効果を発揮することが知られています。国循、循環動態制御部の研究チームは、この治療技術を臨床応用するため、ニューロシューティカルズ社とともに、病態超急性期に迷走神経を安定かつ安全に刺激できるカテーテル(JOHAKU)の開発に成功しました。
現在、実用化を目指して臨床試験の準備を進めています。
2016年度よりAMED 医療分野研究成果展開事業「心筋梗塞後心不全を防ぐ迷走神経刺激カテーテル装置開発」、2019年度よりAMED 医工連携イノベーション推進事業「徐拍化を介して心臓を保護する経静脈的迷走神経刺激カテーテルの開発・事業化」にご支援をいただき、2022年度よりAMED 医療機器開発推進事業に採択をいただきました。
また、開発進捗や開発体制にも高い評価をいただき、同プロジェクトは2018年にAMED理事長賞も受賞しています。

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